急性骨髄性白血病、闘病の記録(その3:9月10月)


3回目の治療(地固め1回目)

9月20日(木)

 翌日の治療の為に首のカテーテルを入れた。非常に辛かった。患者の中には悲鳴をあげたり、涙を流す人もいる。確認の採血をして、地固め治療に入る。

 M先生から次の地固め治療についての説明があった。
 地固め治療は、三回の予定。(一回当たり一ヶ月以上)キロサイド(シタラビン)の大量療法。一日に2回(各3時間)に分けて5.6gを投入して5日間。ちなみに、今までの治療でのキロサイドは、一日24時間かけて140mgで7日間。一日当たり、今までの40倍の量を入れる。副作用は、今までのものに加えて、中枢神経障害が考えられる。しびれ、めまい、けいれん、アレルギー発疹など。副作用が強い場合は、すぐに治療を変更するとのこと。

 肝機能の値が大きいのが気になる。


9月21日(金)治療1日目〜9月25日(火)治療5日目(抗がん剤投入)

 (治療1日目)目薬をさすのに、首のカテーテルを入れた所が痛くて、なかなか上を向けない。少し頭が痛いのと熱っぽい感じがある。午前中に無菌室に入り、10時に吐き気止め(カイトリル)、11時から、いよいよキロサイドを投入した。今後は、午前と午後の11時から3時間キロサイドを、その1時間前にカイトリルを入れる。少し舌がしびれるとか、ボーとして眠たいとかが、今のところの状態。食事も問題ない。この大量療法は、白血球が急激に落ちて、落ちている状態が長く続く。従って、以前よりも感染症に気をつけなくてはならない。肝機能が大きい値である。

 (治療2日目)体がだるい。頭が痛い。体重が急に3Kg増えた。利尿剤を使うことにする。これも抗がん剤の副作用。抗がん剤の点滴時間が短いので、寛解導入治療よりは気分的には楽か。夕べは、けっこう寝れた。夕方、食欲なくなってきた。肝機能が高い値だが、昨日よりは下がった。白血球12100、好中球10900。異常に多い。カイトリルという吐き気止めに入っているソルコーテムというステロイドの影響と考えられる。もう少し様子見。

 (治療3日目)昨夜20時過ぎから、むかつき、めまい、頭痛、胸苦しさ、だるさ、などがいっぺんに出てしまった。吐き気止め入れて2時間ぐらいしたら、だいぶ良くなり抗がん剤終わる頃から朝方まで寝れた。朝は少し頭が痛いのと、むかつきがある。熱は37度台。食欲は全くない。夕方、気持ち悪くなったので、プリンペランという新しい吐き気止めを点滴。でも数時間しかもたない。夜、気持ち悪さは続く。

 (治療4日目)朝、むかつき有り。息苦しさが続いて、脈も早く、むくみが少し出て来た。シタラビン症候群かもしれない。レントゲン撮影の結果、問題なし。

 (治療5日目)強い吐き気止めでもあまり聞かず、今までで一番辛い。麦茶やほうじ茶が苦く感じてしょうがない。手の湿しんがでた。ひりひりする。

 かつらについて
 テレビで夏目雅子さんのドラマをやっていた。最後のテロップに夏目雅子ひまわり基金というボランティア団体があり、白血病患者に、かつらの無償貸し出しをしているとの事。早速連絡してお願いすることにした。かつらの申請のため、看護士さんに頭の寸法を測って貰い、先生にサインと印鑑をもらった。


9月26日(水)治療6日目〜9月30日(日)治療10日目 (血球が下がり始める)

 (治療6日目)むかつきは、たまにある。手の発疹と赤みは、相変わらず腫れとヒリヒリ感が有る。軟膏をもらって手をベタベタにする。夜、熱が急に上がり、38度。いよいよ対処しなければならない。抗生剤オメガシンの点滴をする。血中のカリウムが足りないので、カリウムの点滴を加えた。

 (治療7日目)皮膚科の先生に来てもらって、手の発疹を見てもらったが、よく分らないとのこと。より強い軟膏をもらう。下痢の原因は腸内細菌がいることが分った。すごく苦い薬を水に溶かして3日間服用するとのこと。肝機能の値が高いため、肝臓の薬、強力ネオミノファーゲンCを点滴を追加。

 (治療8日目)むかつき無し。手も少しずつ良くなってきている。水に溶く腸の薬。かなり飲みにくくシロップと混ぜて飲んでもいい事になっているのに、夕べは、そのまま飲んでしまった。一日4回服用しなくてはならない。熱は37度くらいで安定してきている。白血球500、好中球500、かなり下がって来た。肝機能は相変わらず非常に高い値。

 (治療9日目)少しだるいだけで、調子は良い。白血球300、好中球200。抗生剤オメガシンを一日3回から4回の点滴。

 (治療10日目)軽い頭痛、少しむかつき。夜は、けっこう良く寝れる。熱は37度以下で安定している。白血球100、好中球100、いよいよ最低ラインに来た。


10月1日(月)治療11日目〜10月5日(金)治療15日目(好中球ゼロ)

 (治療11日目)レントゲン撮影。採血の結果、白血球84、好中球0。(とうとうゼロになった。自力で細菌を殺す能力はない。)肝機能は、ほんの少しづつ下がって来た。血小板輸血。

 (治療12日目)熱は37度くらい。少しふらつき感がある。夏目雅子ひまわり基金から、かつらが届いた。かつらとは分らないくらい普通に見える。かつらは付けるとかなり暑いということを初めて知る。

 夏目雅子ひまわり基金
 夏目雅子さんのお母さんは、抗がん剤によって頭髪が抜けてしまうことを彼女が非常に嫌がると考え、弱い薬を使うことを選択した。しかし、その薬では効果がなく最後には強い抗がん剤を使わざるを得なかった。その結果、白血病細胞は減少して効果があったが、最初の治療で体力が極端に落ちていたため、感染症(肺炎)になってしまい命を落とした。夏目雅子さんは髪の毛が抜けることなど気にしていなかったらしい。お母さんは、後日それを知って、何故最初から強い抗がん剤を使用しなかったのかと後悔したという。そのことから夏目雅子さんが大好きだったひまわりという名前の基金を作って、苦しんでいる白血病患者にかつらを貸してあげようと考えたとのこと。

 (治療13日目)カツラがあるだけで気持ちも明るくなってきた。首のカテーテルが少し痛い。赤くなっている。皮膚科の先生が手を診に来てくれた。そろそろ薬をつけなくても大丈夫。白血球87、好中球0。肝機能は、まだ高い値。熱がないので、点滴の抗生剤オメガシンを終了。吐き気がないので、内服薬ナウゼリンを今晩で終了。内服薬は7種から6種類に。

 (治療14日目)血小板の輸血。白血球62、好中球0。肝機能は、今までで最高の値になった。M先生と話をした。医者もこの値は気にしている。ただ、今までの全てのデータを見る限り、主にオメガシンに依存していると考えられる。ジフルカンも影響あるかもしれない。薬の投与や中止に対して、肝機能のデータは1週間くらいの遅れがある。熱が低い状態なので、抗生剤点滴を中止してみることにした。そして今日、新たに肝臓の内服薬ウルンを追加する。内服薬は、また7種類になった。

 (治療15日目)肝機能は、まだ上っている。肝機能の数字が大きいので、明日より内服薬ジフルカンカプセルを中止する。熱がなく炎症反応がないので、抗生剤をほとんど服用しないことにする。


10月6日(土)治療16日目〜10月8日(月)治療18日目(好中球ゼロで高熱)

 (治療16日目)37.5度。いつもより熱があり胃の軽いむかつきとだるさが有る。熱が一気に40度まで上る。首のカテーテルを抜いて腕からのカテーテルに変更。点滴の抗生剤マキシピームを投入。解熱剤の点滴。嘔吐のため内服薬は服用できない。吐き気止めプリンペランを点滴。レントゲン撮影。アレルギー止めと血小板の輸血。熱が不安定に上がったり下がったりする。白血球28、好中球0、肝機能の値はかなり高い。今は、肝機能よりも感染症を防ぐことを優先しなければならない。今日は着替えることも出来なかった。

 (治療17日目)37.0度。むかつき無し。少しだるさは残る。夜、39度まで上がったので解熱剤使用。白血球0、好中球0。炎症反応CRPが大きい。この炎症反応が正常でない限り、発熱は解熱剤の効果なので安心できない。

 (治療18日目)解熱剤を点滴したが遅すぎたため、今までの最高の40.7度まで上った。最悪状態。体中に冷却剤をまいて熱を下げた。その後37.3度まで下がる。。解熱剤の投与タイミングに気をつけなくてはならない。今日も、寝る前に解熱剤を入れるようにする。白血球100、好中球0。肝機能は、非常に高い値。でも仕方がない。炎症反応は、昨日よりは、良くなっているがまだ高い値。これでは熱が上る。新しい抗生剤アミカシンの点滴を追加。その後、抗生剤マキシピームを点滴。赤血球輸血。


10月9日(火)治療19日目〜10月11日(木)治療21日目(グラン注射で細菌に対応)

 (治療19日目)昨夜は、ずっと37度以下だったので、安心していたら、だんだん熱が上がって来た。午前3時過ぎに解熱剤。そのおかげで38.2度までしか上がらなかった。だるさは、残るものの大丈夫。昼間は37度以下。レントゲン撮影、問題なし。白血球の増加を促進するグランを注射。今朝の採血の結果:白血球400、好中球0。肝機能は高い値。炎症反応CRPはまだ高い値。点滴の抗生剤オメガシン追加、マキシピームは中止、強力ネオミノファーゲン(肝臓)、夜中にビーフリード(栄養)、水(24H)。まつげや眉毛が抜けてきた。M先生は、熱はおさまるのではないかと予測。

 (治療20日目)朝、38度弱。昨日の白血球を増やすグラン注射の副作用により、夜中1時半、胸の骨の痛みで目が覚める。そのうち治ってくると思ったら、痛みは増し寝れない。足の付け根まで痛みだし午前4時半、夜勤の先生の診察を受けた。同時に熱も上がってきたので採血。午前5時過ぎ解熱剤、午前6時前に痛み止め(粉の飲み薬)、 朝は痛みは無い。昼間の熱は37度以下。白血球を上げる注射グランは、全ての骨髄に作用するので痛みが出やすい。午後、腰の痛み(ぎっくり腰のような)が、はげしくなり、痛み止め(ピリナジン末)を服用。でもすぐに又痛くなる。夜は効果時間を長くする為、点滴にする。白血球800、好中球100。(グランの効果) 炎症反応はまだ高い。点滴:抗生剤アミカシン、抗生剤オメガシン、更に今日は抗生剤ファンガードを追加、解熱剤ソルコーテフ、強力ネオミノファーゲン(肝臓)、夜中にビーフリード(栄養)、水(24H)。左腕のカテーテルが痛くなったので、右腕にカテーテルを入れる。

 M先生からの説明。今回の発熱は厳しかったけれど、懸命に回復させている。血液培養を行ったが、細菌を特定できていない。グランの副作用で痛みが強いが血球が上るまで中止することはできない。痛み止めでカバーする。大量療法の最後にグランを入れるのは一般的。抗生剤が効かなくなってくると自らの好中球で細菌を殺さなくてはならない。グランを入れて強制的に好中球を上げる。体中の造血幹細胞を刺激するために激痛が出る場合がある。

 (治療21日目)朝、38度弱。むかつきと腰の痛み。夜中なかなか痛み止めが効かないで痛みに苦しんだ。グランの効果により、白血球3900、好中球1400になったので、無菌室から出て病棟の個室に移動した。そして熱の原因を探るためCT撮影をした。(CTは無菌室から出る必要がある) 結果は問題なし。今日は、むかつきがはげしくて、ほとんど食事ができない。炎症反応CRPはまだ高い。今日はグランの注射はやっていない。グランを中止すると白血球、好中球が半減する。モルヒネの次に強力な痛み止めを投与している。夜、痛みはなくなったが、だるさとむかつきがきつい。差し入れで持っていった新橋亭の焼売も食べられず、持ち帰ってきた。


10月12日(金)〜10月16日(火)(病棟にて)

 (10/12)熱は37度前後。グランの影響で右腰に鈍い痛みがたまにあるが痛み止めはいらない。前日までの具合悪さが嘘のよう。白血球4800、好中球2400。グランを止めても減少しない。(一般的には半減する) 夜、熱がちょっと高くなってきて、食欲がなく、だるさ、むかつきがある。肝機能下がってきた。炎症反応はまだ高い(時間的に2日間遅れるとのことだが気になる値)。点滴、内服薬は変わらず。

 (10/13)熱は37度以下で安定。たまにむかつきあり、顔が少し浮腫んでるようで、腫れぼったい感じがする。点滴抗生剤の一つアミカシンを中止。少しづつ減らしていく。夜中の水の点滴も中止する。白血球3800、好中球1900。肝機能はもう問題ない値、炎症反応CRPはまだ少し高い。M先生も現状の値をみて、もう大丈夫と言っていた。でもグランで急激に回復させたため、少し辛い感じがある。

 (10/14)点滴の水が一つ減ったせいか軽いむかつきが一晩中あった。右腕のカテーテルが痛くなってきたので、再び左腕に変更。水の点滴は全て中止。残るは、抗生剤2種と肝臓の点滴のみ。内服薬は変わらず。

 (10/15)夜むかつきがなかったお陰で、かなり楽になってきた。熱はOK。カテーテルが少し痛い。今日で点滴は最後になる予定。明日カテーテルをはずす。白血球3400、好中球1700、炎症反応CRPは少し高い。

 (10/16)むかつきも無し。夕べは腰が痛く、なかなか寝付けなかった。カテーテルを外す。点滴は全て終了。内服薬は胃と肝臓の2種類だけになる。


10月17日(水)〜10月21日(日)(外泊)

 外泊で一時帰宅する。かつらはしていても家から外出するのが怖いようだ。雑菌とかの気分的な問題と非常に疲れやすくなっている。最初の帰宅のときは、家事も少ししたが、今回はほとんど動くことはない。長くベッドにいると筋肉が弱くなっていて、動いた後は、とても辛いようだ。食欲はあるので病院では食べることが出来ないものをたくさん食べた。家にいると時間が経つのがとても早い。病院に戻ることを考えて、気分が暗くなっている。あと2回の治療だがすごく辛いのだろう。


10月22日(月)〜10月25日(木)

 (10/22)外泊前の血液検査で血球が下がっていたので、朝の血液検査の結果によりマルク、CV(カテーテル)の日程を決めるそうだ。十分血球が上がってから治療に入ったほうが良いとのこと。全て血液検査の結果次第。体調は良い。 白血球3300 好中球2500。病棟の他の患者さんと色々な話をする。再発した人が2人いるそうだ。すごいショックだろう。でも、とても前向きな人達だそうです。

 (10/23)体調はまあまあだけど少し疲れを感じる。

 (10/24)白血球2800 好中球1800。好中球が1500になった時点から1週間位して次の治療に入るのが普通という。初枝の場合、上がったり下がったりで、なかなか決められないみたい。レントゲン撮影。

 (10/25)体調は良好。午前中マルク。肝機能のデータが良くないので、消化器内科外来に行く。治療に対し特に問題ないとのこと。マルクの所がまだ少し疼いている。明日午前中CVの後、無菌室に入り4回目の治療に入る。




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